お酒と健康(高血圧など)について考える…酒は百薬の長なのか?
お酒と健康(高血圧など)について考えることがないだろうか。
お酒の飲み過ぎが健康に悪い…ということは、ほとんどの人が知っていることだ。だが、どうして悪いのかについては、「飲み過ぎは肝臓に悪い」程度で、よく知らないのではないだろうか。
また、「酒は百薬の長」という言葉も有名だ。この言葉から、お酒は適量であれば健康に資する…と考える人も多いだろう。今回は、お酒と健康について書いてみたい。かなり怖い話もあります。
お酒が高血圧を導く、ということであれば、わたしはお酒をやめなければいけない。
目次
酒は百薬の長の意味
酒は百薬の長という言葉がある。
酒は百薬の長の意味は、「適量のお酒であればどんな薬にも勝る」という意味だ。
お酒を飲む人が、「酒は百薬の長」を根拠にして飲むことを正当化することがあると思うが、そうでない人でも、適量の酒であれば健康に資するだろう…と理解しているだろう。
たしかに、適量の酒(少量の酒)であれば、そういうことがあるようだ。
たしかに、少量の飲酒は血液の脂質代謝を改善し、冠動脈疾患(狭心症・心筋梗塞)の危険性を下げるという調査結果があります
出典:酒は百薬の長ですか? — はまもと内科クリニック
少量の飲酒は、冠動脈疾患の危険性を下げる可能性があるそうだ。お酒のメリットとしてよく耳にするのが、(適量のアルコールは)善玉のHDLコレステロールを増やす…というものだ。
コレステロールについては、善玉コレステロールを増やし、悪玉コレステロールを減らせばいいと考えている。高血圧の人にとっては、(関連の疾病を防ぐために)両者の比率(LH比)を改善することが大事になると理解しているが、そのために適量のアルコールが有効かもしれない。
認知症のリスクも下がる
適量の飲酒をすることで、認知症のリスクも下がるそうだ。
飲酒量とによる認知症のリスクの関係を調べたある研究では、ほどほどの量(週にビール350mlを1~6本)を飲んでいる人が、認知症のリスクが最も低くなるとの結果が出ている
出典:酒は毒? 薬? アルコールの影響で「脳」はこう変わる
65歳以上の男女(3660人)を対象にした米国の研究では、ほどほどの量の飲酒をする人は、全く飲酒しない人と比べると、認知症のリスクが半分以下になる…という結論が示されている。
Jカーブというもの
初めて聞く人もいると思うが、「Jカーブ」というものがある。
縦軸に「全死亡率」、横軸に「1日の飲酒量」をとったグラフだ。このグラフにデータをプロットすると、「J」のような形になる。すなわち、適量の酒(少量の酒)を飲む人が最も死亡率が低くなる…ということになる。※それを超えて飲酒量が増えると、死亡率はどんどん高くなる。
酒は健康によいという主張で必ず引用されるのが「Jカーブ」です。全然飲まないより、毎日適量を飲んでいたほうが健康によいというエビデンスで、健康の指標は総死亡数、虚血性心疾患、脳梗塞、2型糖尿病など、対象者は先進国の中高年男女です
出典:やっぱり、飲酒は控えたほうがいいんですよね?
※先に述べた、「認知症になる危険性」と「1週間あたりの飲酒量」もJカーブに近い。
総死亡数、虚血性心疾患、脳梗塞、2型糖尿病などでJカーブがみられる。ただし、高血圧、脳出血、高脂血症(中性脂肪)、乳がんなどでは、Jカーブではなく正比例の関係にあるとされる。
とすると、脳梗塞はOKだが、高血圧、脳出血はNG…ということになる。
高血圧の人にとっては、なんとも微妙な話になってきた。
お酒と高血圧の関係
お酒と高血圧の関係をはっきりさせておこう。
アルコールは血圧を一時的に下げることもありますが、長い間、飲み続けると、血圧を上げ、高血圧症の原因になると考えられています。多くの研究で、日々の飲酒量が多いほど血圧の平均値が上がって、高血圧症になるリスクも高まることがはっきりしてきました。
出典:[32] 飲酒、喫煙と循環器病 | 国立循環器病研究センター 循環器病情報サービス
アルコールは、一時的に血圧を下げることはあるが、長期間とり続けると血圧を上げることになる…ということだ。
上で、縦軸に「血圧」、横軸に「1日の飲酒量」をとった場合、Jカーブではなく正比例の関係になる…と書いたが、そのようなイメージでいいのだろうと思う。引用元では、「アルコール1日30mlあたり、血圧は3mmHg上がることが認められる」としている。
※30mlは、ビール大瓶1本、ワイン2杯に相当する。
アルコールで血圧が上がる理由だが、1)血管の収縮反応が高まる、2)交感神経の活動、3)腎臓からマグネシウムやカルシウムが失われる、ということのようだ。
お酒と一緒に、塩分の強いつまみを食べることも関係するだろう。
お酒のデメリット
お酒には健康に対するデメリットがある。
60gを超えると血糖値が大いに乱れます。アルコールの大量摂取は、依存症やアルコール性肝障害、栄養 障害、認知症の原因となります。喫煙者がアルコールを大量に摂取すると、食道がんの発生率が高まると言われています
出典:酒は百薬の長ですか?|はまもと内科クリニック
お酒を飲む量が増えると、デメリットが強くなり、メリットを上回ることになる。
先に述べた「血圧が高くなる」ということもそうだし、血糖値が乱れる、依存症やアルコール性肝障害、栄養障害、認知症の原因になる、(喫煙とのコンボでは)食道がんの発生率が高まる…ということもあるそうだ。なので、お酒を飲み過ぎてはいけない、ということになる。
脳が萎縮する
次に、脳の萎縮の問題だ。
アルコールが加わるとかなり進むと考えられています。同じ年代でお酒を『飲む人』と『飲まない人』の脳をMRI(核磁気共鳴画像法)の画像で比べると、前者の脳は後者に比べ10~20%ほど萎縮していることが多い
出典:酒は毒?薬?アルコールの影響で「脳」はこう変わる
脳は加齢とともに萎縮するが、萎縮を早めるのがアルコールだ。
お酒を飲まない人と適量を飲酒する人の間では、ほとんど違いがない…という見方はあるが、お酒を飲まない人と大量の飲酒をする人の間には、明確な違いが出るそうだ。
ある調査では、毎日1日2合(約360ml)以上飲む人は、飲まない同年齢の人よりも10年早く脳の萎縮が進行する…という結論になっている。
また、「生涯のうちに飲むアルコールの総量」が脳の萎縮と相関がある…とする見方もあるようだ。ちょっと、これまで飲んだアルコールの量を考えてみよう。若い時に浴びるように飲んでいた…ということであれば、今後は控えた方がいいのかもしれない。
記憶力の低下を感じる人は、注意した方がいいだろう。
お酒の適量とは
最後に、お酒の適量について考えてみよう。
ここまでの話で、1)お酒は飲み過ぎるとはっきり健康の害になる、2)適量であれば健康に資するかもしれない…ということがわかった。では、「適量」とはどれぐらいの量のことを指すのだろうか。適量については、細かい違いはあるようだが、おおむね一致しているようだ。
男性の場合は、
ビール:500ml(中ジョッキ1杯程度)
ワイン:200ml(グラス1杯=125ml)
日本酒:180ml(1合)
まで、ということになりそうだ。※女性はこの半分。
まとめ
今回は、お酒と健康(高血圧など)について書いてみた。
まず、お酒の飲み過ぎが身体に悪い…ということは明確なので、適量を超えて飲むことはできるだけしない方がいい。
過度の飲酒が身体に悪いことはなんとなく知っていても、脳の萎縮が早くなることは、知らない人が多いのではないだろうか(これは長生きできても、いろいろな意味でキツクなる…ということを示す)。
適量を飲めば、健康に資する可能性はあるが、人によるのだろうと思う。
たとえば、お酒を飲むとすぐ顔が赤くなる人が、酒は百薬の長だから…ということで飲むのは、違うように思う。そのタイプの人は、逆に、少量でも健康を害する可能性がある。それ以外の人が楽しく適量を飲む分については、健康にもいい…ということになるのだろう。
今回の記事:「お酒と健康(高血圧など)について考える」