闘病記を読んで考えさせられたこと
「カーテンコール」という本を読んだ。川島なお美さんと鎧塚俊彦さんが書いた本だ。
川島なお美さんが書いたもの(闘病記ということになるのだろうか…)をベースにして、鎧塚俊彦さんが補足する、という形になっている。
考えさせられる内容があったので、書評という形で書き記しておきたい。※おすすめできる本だ。
川島なお美さんは、肝内胆管がんにより、54歳で他界している。
目次
- 目次
- 検査被爆の問題
- 検査を受けるのはリターンがリスクを上回るとき
- 抗がん剤を使わない
- 家族であれば治療をしない…はない
- 自分の頭で考える、ということ
- わかったふりをしない
- 俯瞰で自分を見つめる、ということ
- まとめ
検査被爆の問題
気になることに、検査被爆の問題がある。
川島さんは、亡くなるまでの15年ほどの間、PET-CTという検査をがん検診で受けていたそうだ。※中には、受診しない年もあったそうだが。
ここ5年くらいは毎年人間ドックにPET-CTのオプションをつけて受診していました。この医療被曝こそ、発がん因子になっていると、M先生の本で読んで愕然としました。発表されている6~9ミリシーベルトというのは最低値で、本当は10ミリ、20ミリ近く受けていて…
出典:カーテンコール, pp.42-43.
20ミリというのは、わたしの認識とも一致する。
わたしは医師にCT(PETではない)の被ばく量について、直接尋ねたことがある。
そのときの医師の答えは、内部と外部を合わせて、20ミリを超える数値だった。その数値を聞いて思わず、「この被ばく量だと、(CTは健康診断で)毎年受けるような検査ではないですね?」と医師に言ったところ、その医師は(嫌そうにではあるが)肯定した。
なので、川島さんが毎年PET-CTを受けていた、と聞いて驚いたのだ。
検査を受けるのはリターンがリスクを上回るとき
病院は利益のことを考えると、CTの稼働率を上げたいはずだ。
ビジネスの点から考えるとその気持ちはわかるが、病院の利益のために、患者の利益を侵害してはいけない。(医師に対するお願いだが)医師が患者にCT検査を勧めるときは、リスクとリターンについて患者によく説明してほしい。
※当然のことながら、リターンだけでは不十分だ。
リスクを伴う検査を受けることが適切なのは、「リターン>リスク」のときだけなのだ。
このタイプの検査を受ける際は、その点をどう考えるのか、(説明がなければ)医師に尋ねた方がいいだろう。※この場合は、医師に質問しないと有益な情報を引き出すことができない。
※リターンを「ベネフィット」としてもいい。
抗がん剤を使わない
川島さんは、抗がん剤を使わない、と早い段階から決めていた。
一部のがん以外には、百害あって一利なしだそうです。患者に抗がん剤をすすめても、医者自身や大切な家族には決して抗がん剤を使わないという話もよく聞きます。何も知らずに、医者任せで安易に抗がん剤治療を受けると、免疫力が落ち、健康な細胞までもが攻撃されて他の病気を併発してしまうケースやその人らしい生活の質、QQLが損なわれてしまうものだとわかりました。
出典:カーテンコール, pp.43-44.
抗がん剤が、がんに対して有効なのかどうか、については、専門家ではないのでコメントを避けるが、その治療により、「免疫力が落ち、健康な細胞までもが攻撃されて、他の病気を併発してしまう」というケースは、あるのだろうと思う。このことが、抗がん剤を使用するリスクになる。
※問題は、(上で述べたことと同じで)リスクをとる価値があるのかどうか、ということだ。
また、「医者自身や大切な家族には決して抗がん剤を使わないという話もよく聞きます」、という部分についてだが…医師に「先生の家族にも、同じ治療(抗がん剤治療)を勧めますか?」と尋ねる患者がいる。しかし、この質問は医師の答えだけに注目するのであれば、無意味だ。
家族であれば治療をしない…はない
「家族であれば、 抗がん剤治療を勧めません」などと言う医師はいないからだ。
もし、この質問に意味があるとすれば、「YES」と答えるときの、医師のボディランゲージに注目する場合のみだ。ボディランゲージで「NO」を表明していれば、その治療をしない方がいい、ということになるからだ。※その際は、表情や態度、目の動きなどに注目することだ。
自分の頭で考える、ということ
川島さんは、病気に関する情報を集め、自分の頭で考える、ということをしている。
医者任せにしていない、ということだ。
この日もドクターたちに疑問をぶつけました。次々と出てくる専門用語。エビデンス…湿潤…原発巣…少しも理解できない言葉が出てくればスルーしないで質問。めんどくさい患者だと思われてもいいんです。命かかってるんですから。
出典:カーテンコール, p.25
医師に不明な点をどんどん質問したそうだ。わたしはそのスタイルに賛成だ。
わかったふりをしない
医師の説明がよくわからないのに、わかったような顔をするのが一番まずい。
わからなければ質問する、それでもベースの知識不足などにより、わからなければ、(わかったふりをせず)機会を改めればいいのだ。※わかったりふりをしても、いいことはない。
降圧剤を使用している人は、「降圧剤を使用し続けていることが原因と考えられる、その他疾病」があるのかないのか、あるとすればどれぐらい深刻なのか、医師に確認した方がいいだろう。このような話は、患者の方から質問しないと、引き出すことができないと思う。
出典:高血圧の人は降圧剤を飲んだ方がいいのか?
上でも書いたが、(専門家には)的確な質問をしないと、有益な情報を引き出すことはできない。そのためには、川島さんのように情報を集め、勉強する必要があるだろう。
俯瞰で自分を見つめる、ということ
女優には、俯瞰で自分を見つめる、というクセがあるそうだ。
これは、お客さん目線で自分がどう見られているのか確認する、ということだ。川島さんががんを告知されたときも、がんを告知された役を演じるときの気持ちを考えたそうだ。
俯瞰で自分を見つめる、ということは、冷静になるためにも必要なことだと思う。
病気に限ることではないが、感情を抑えて冷静になる必要があるときは、 俯瞰で自分を見つめることが必要になるのだ。※客観的に自分を見つめる、ということだ。
まとめ
今回は、川島なお美さんと鎧塚俊彦さんが書いた闘病記(といっていいだろう)を読んだ感想を書いた。闘病中の人には、参考になるような内容があると思う。
余談だが、この人のプロ意識はすさまじかった。
激ヤセしていたにもかかわらず、肌を露出する衣装だったのも「彼女の強気な性格があったからこそ。ここだけの話ですが、彼女はあの時点で自分がこうなることを悟っていたみたいなんです。でも、だからこそ普段通りに振る舞いたかった。
昔からよく知っている人はあの姿をテレビで見たとき、これはヤバイな…って思っていましたから…。でもそれが彼女のプロ意識だったんです。
亡くなる17日前まで、(自分がどうなるか知った上で)女優としてスポットライトを浴びていたのだ。最後まで、自分らしく強気を貫き通した、ということになるだろう。本については、いろいろと考えさせられる本だった。まだ読んでいない方は、読んでみるといいだろう。
次回の記事:「闘病記を読んで考えさせられたこと#2」
今回の記事:「闘病記を読んで考えさせられたこと」