高血圧と、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血
「脳梗塞、脳出血、くも膜下出血の違い」について、これまで3回に分けて書いてみた。
最初に述べたが、脳卒中の記事を書こうと思う前までは、「脳卒中と脳梗塞はどう違うの?」というレベルだった。このように、知識不足であったり、理解が浅いことでも、自分なりに調べたことを書いて整理すると、知識や考えがまとまり、多少なりとも気づきが生じる。
今回は、「脳梗塞、脳出血、くも膜下出血の違い」シリーズのまとめの意味もあるが、特に高血圧の人が、どの程度それぞれの疾病に注意を払うべきなのか、について書いてみたい。
目次
脳卒中というのは「総称」である
まず、脳卒中、脳卒中と言うが、脳卒中というのは、「総称」である。
脳卒中は、大きく分けると「脳梗塞」、「脳出血」、「くも膜下出血」の3つある。
なので、「脳卒中で倒れた」と言っても、それだけでは、どの疾病に該当するのかわからない。
そして、高血圧との関係もすべて同じ、というわけではない。これは、このシリーズ記事の最初に書いたとおりだ。※なので、高血圧 ⇒ 脳卒中、とすると、乱暴な議論になる。
たとえば、医師に対し、「脳卒中と脳梗塞はどう違うのか?」という質問をすると、「まったく勉強していないな…」と思われてしまうので、注意してほしい(笑)。
※レベルの違う話を混同してはいけない。
脳梗塞、脳出血、くも膜下出血の違い
脳梗塞、脳出血、くも膜下出血の違いについては、これまでの記事を見てほしい。
ここではサラッと流すが、「詰まる」のが脳梗塞で、「破れる」のが脳出血とくも膜下出血だ。
脳出血とくも膜下出血は、血管が「破れる」という意味では同じだが、破れる場所が異なる。
簡単に言えば、脳出血は脳の中、くも膜下出血は脳を覆う「くも膜」の下で血管の破れが生じる、ということだ。※くも膜下出血の場合は、脳脊髄液に血液が混入することでトラブルが生じる。
脳の中の血管が「詰まる」も「破れる」も、いずれも深刻な状態だが、あえて比較すると、「破れる」の方がより深刻な状態なのかもしれない。脳出血とくも膜下出血の場合は、元気に復帰する、という人が少ないような印象を受けるのだ。※あくまでも、個人的な印象です。
脳血管疾患全体の死亡総数
脳血管疾患全体の死亡総数をみてみよう。
厚生労働省のデータによると、2014年における脳血管疾患全体の死亡総数は、全死因の4番目で(割合は)約9.0%になる。※脳血管疾患は、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血を含む。
※死因順位(1~4位) :1位 がん(36.8万人)、2位 心疾患(19.7万人)、3位 肺炎(11.97万人)、4位 脳血管疾患(11.42万人)
※全死亡者数は、127.3万人
脳血管疾患の内訳は…
脳血管疾患(11.42万人)の内訳は、以下のとおりだ。
1位 脳梗塞(6.61万人)、2位 脳出血(3.255万人)、3位 くも膜下出血(1.266万人)。 割合で言うと、1位の脳梗塞が57.9%で過半数を占め、2位の 脳出血が28.5%、3位のくも膜下出血が11.1%になる。
※脳梗塞の多さがよくわかる。
脳梗塞と高血圧の関係
では、脳梗塞と高血圧の関係はどうなのだろうか。
問題は、それぞれの疾病と高血圧との関係だ。高血圧の人は、この関係を知りたいと思っているはずだ。※高血圧の人が、降圧剤を使うか使わないか、の判断材料になるはずだ。
まず、脳梗塞だが、以下の記事で述べたように、
高血圧が脳梗塞に対して、どの程度関与するのか(原因になっているのか)よくわからない。
高血圧が原因ではない脳梗塞があるからだ。
なので、高血圧の人が脳梗塞になったからといって、即、高血圧が原因だとすることはできない。それとも、何かハッキリ高血圧が原因だと言える根拠があるのだろうか…(不明)。
「もし」だが、高血圧の人が脳梗塞になった場合、本当の原因を調べずに(はたして正確に調べることができるのだろうか…という疑問もある)「高血圧が原因だ」としてカウントすれば、高血圧が脳梗塞に対して関与する割合が、不当に高くなってしまう。
高血圧の関与を6割とする
だが何とか、目安になる数字を求めてみたい。
当該記事の引用元には、「高血圧が原因で起こるタイプの脳梗塞が、一番多いという事実がある」と書いてある。ここでは、それを信じてみよう。「一番多い」というのがどの程度かわからないが、仮に「6割」としてみよう。
そうすると、高血圧の人が(死亡する場合に)脳梗塞に罹患して亡くなる確率は、9%*57.9%*60%=3.13%になる。他方、高血圧ではない人が(死亡する場合に)脳梗塞に罹患して亡くなる確率は、9%*57.9%*40%=2.08%になる。
つまり、高血圧の人は、そうでない人よりも、「1.5倍」脳梗塞に罹患し死亡する確率が高い、ということになる。
高血圧の関与を8割とする
6割としたところを「8割」にしてみると、
高血圧の人が(死亡する場合に)脳梗塞に罹患して亡くなる確率は、9%*57.9%*80%=4.17%になり、高血圧ではない人が(死亡する場合に)脳梗塞に罹患して亡くなる確率は、9%*57.9%*20%=1.04%になる。倍率で言えば、「4倍」になる。
高血圧の人が診察で主に聞かされるのは、この倍率の部分だ。
実はこの倍率というのは曲者で、それだけを聞いても重要度を判断できない。なので、倍率の背景にある数値を自分で計算してみたのだ。※数値はあくまでも参考程度に見てほしい。
まとめ
以下、まとめてみよう。
[ ケース1:脳梗塞に高血圧が関与する割合60% ]
高血圧の人が(死亡する場合に)脳梗塞に罹患して亡くなる確率:3.13%
高血圧ではない人が(死亡する場合に)脳梗塞に罹患して亡くなる確率:2.08%
※1.5倍
[ ケース2:脳梗塞に高血圧が関与する割合80% ]
高血圧の人が(死亡する場合に)脳梗塞に罹患して亡くなる確率:4.17%
高血圧ではない人が(死亡する場合に)脳梗塞に罹患して亡くなる確率:1.04%
※4.0倍
問題は、これらの数値をどのように評価するかだ。
高血圧の人が診察でよく聞かされる「倍率」だけではなく、 「脳梗塞に罹患して亡くなる確率」を合わせて見ることで、重要度を評価できると思う。
※倍率だけ見て怖がる…というのは違うだろう。
※本記事では、わかりやすさを優先しています。また、高血圧の患者サイドから発信している情報である…ということにご留意ください。
※続きの記事